【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
優しさと微笑んだ顔に心を撃ち抜かれた。


同じ係だったのはそれっきりだったから交流は少なかったけど、たまに授業でペアになった時はテンション上がってたなぁ。歌のテストとかスケッチとか。

だからご近所さんとして再会した時はビックリした。

同じ学校に通うって知った時なんかは嬉しすぎて、登校日が来るまで毎晩ニヤニヤ顔で寝てたもん。


あれから7年。立派な好青年に成長した紅耀くん。

比べて私は、相変わらずおっちょこちょい。


そう、今この瞬間も──。



「はぁ……」

「朝からお疲れのようですねー」



ロングホームルームが終わった休み時間。

机にぐでんと突っ伏していると、榎本くんが顔を覗き込んできた。



「もしかして五月病?」

「いや、さすがに早すぎるよ。ちょっと、自分自身にウンザリしてるといいますか……」



首を傾げる彼に苦い笑みを向けながら体を起こす。



「さっきの校歌、全然歌えなかったんだ」

「校歌? 朝礼の?」

「うん。来月までには覚えようって決めてたのに、練習サボっちゃって」
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