【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
どこの学校でも共通の全校朝礼。この学校では毎月1回、月の初めに行われている。


始業式の時に初めて聴いて、次の朝礼までには歌えるようにならなきゃなって。

なのに、サビの最後、学校名の部分しか歌えなかった。


別に、チェックされることはないから、毎回口パクで参加してる人もいるかもだけど、それだと学校に失礼な気がするし。

新学期で忙しいからって後回しにしないで、せめて1番だけでも覚える時間を作るべきだった。



「良かったらお手伝いしようか? 歌詞全部頭に入ってるし」

「え、いいの?」

「おぅ、任せといて! ……と、言いたいところだけど、歌唱力に自信ないから音程は……あっ」



すると、教室に戻ってきた郁恵ちゃんを見つけ、「ちょっと来てー」と手招きして呼び寄せた。



「どうしたの?」

「高梨ちゃんが校歌覚えたいって言っててさ」

「校歌?」

「うん。さっきの朝礼で全然歌えなくて……」



頭上にハテナマークを浮かべる彼女に事情を説明した。



「なるほど。いいよ。昼休みに練習しようか」

「ありがとう! お願いします!」



二つ返事で了承してくれてあっさり決定。

昼食を終えた後、教室の隅でおしどりカップルによる特別レッスンを受けた。
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