【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい




「──……ちゃん、こーちゃんっ」



裏門でスマホ画面を凝視していたら、トントンと肩を叩かれた。耳からイヤホンを外して顔を上げる。



「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった。音楽聴いてたの?」

「うん。といっても校歌だけど」



外したイヤホンを紅輝くんの耳に当てる。



「今朝全然歌えなかったから、頭に叩き込んでるの」

「頑張り屋さんだね〜。でもなんか、聞き覚えのある声が聞こえるんだけど……」



おおっ、これだけ大勢の声が混ざってても、やっぱり友達の声はわかるんだ。



「少しガヤガヤしてるし、これ、CDの音源じゃないよね? いつ録ったの?」

「昼休み。クラスメイトに頼んで、録音させてもらったんだ」



戸惑う彼にスマホ画面を見せる。


映っているのは校歌の歌詞。

間奏に入ると、歌詞カードが下がり、肩を組んで熱唱する男子達が現れた。


いつでも練習できるように録音したかったのだが、教室が騒がしく、2人の声だけだと上手く録れないと思い、声量がある運動部の人に協力を求めたのだ。

ちなみに郁恵ちゃんは、動画を撮っている私の後ろで指揮者をしている。
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