【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
2度目の溜め息をこぼし、窓際に置かれた時計を見る。


出発時間まであと3分。さぁどうしようか。

髪の毛で隠す? でも擦れると痛いからなぁ。かといって絆創膏を貼るとますます目立つし……。


時間ギリギリまで考えたが、いい案が思いつかず。無難にマスクを着けていくことに。


リビングに向かい、棚からマスクを1枚取って玄関へ。

靴を履いていると、奥からパタパタと足音が近づいてきた。



「あっ、こーちゃん」



聞き慣れたあだ名で私をそう呼び、靴箱からスニーカーを取って隣で履き始める。



「早いね〜。何か用事?」

「うん。数学の小テストがあるから勉強しようと思って」



真っ赤なランドセルを背負ったポニーテールヘアのこの子は、妹の桃乃(ももの)。私と同じく童顔だが、小学5年生の上級生。

末っ子なので、私のことは「こーちゃん」、日和のことは「ひーちゃん」と呼んでいる。


マスクを装着すると、隣から視線を感じた。



「……風邪引いたの?」
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