【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
顔を向けてみたら、心配そうな眼差しで見つめている。

しまった。いつもの癖で。



「ううん。ちょっと肌が荒れたから隠してるだけ」

「ほんと? のどが痛いとか咳が出るとかじゃなくて?」

「ほんとほんと。じゃなきゃペラペラ話せないよ」



迫ってくる桃乃に笑顔で対応する。

連休中、ずっと歌ってたからな。特に昨日は、『私も覚えたいから』って、お風呂の中で校歌教えてたし。



「本当に、我慢してない?」

「してないよ」

「……痛くない? ニキビ」

「……少し。でもこれはお菓子食べすぎたせいだから!」



欲望のままに食べまくって、ケアを怠った自分のせい。桃乃は何も悪くないよ。

嘘を織り交ぜながら答えると、ようやく桃乃の顔から不安が消えた。



「辛くないなら良かった。あまり無理しないでね」

「うん。桃乃もね」



「いってきまーす」と毛先を揺らして先に出ていった。
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