【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい




「じゃ、また放課後」

「うん。またね」



3階の廊下で、教室に入る紅耀くんを見送った。

歩を進めて隣の教室……には入らず、窓際に移動する。


少し急いでくれたおかげで、予定より早めに着いた。けど、信号に止まらないで来ちゃったから、息切れが……。


窓を開けてマスクを外す。

はぁ〜、これで酸素を補給できる。



「小夏っ」



新鮮な空気を体内に取り込んでいると、心地よい低音ボイスが響いた。

この学校で私を呼び捨てで呼ぶのは1人しかいない。



「このゴム、小夏のだよな?」



マスクを着けようとしたが、時すでに遅し。

恐る恐る横を向くと、フリーザーバッグに入った黒いヘアゴムが差し出されていた。


そういえば、シャワー借りた時に使ったんだっけ。



「洗面台の近くに落ちてた」

「……ありがとう」

「いーえ。それよりその顔……」

「ええっ⁉ 2000円⁉」
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