【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
紅耀くんが口を開いたのと同時に、階段のほうから驚く声が上がった。



「GWだったから、ちょっと予算オーバーしちゃった」

「だからって半分はないだろ。せっかく解禁したのに、また止められるぞ」

「大丈夫! 今月から使わなかった分は貯金するって決めたから!」



仲睦まじいやり取り。

会話の内容と声からすると、多分榎本くん。
そしてもう1人は、郁恵ちゃんではなく……。



「ちょっと来て」



腕を掴まれて廊下を突き進み、反対側の階段にやってきた。

薄暗く人がいないからか、緊張が走る。



「これ塗って」



再び手を取った彼が、私の手の甲に何かをつけた。

半透明に近い白いもの。これは、クリーム……?



「ったく、世話が焼けるなぁ」



首を傾げてまじまじと見ていたら、もう片方の手を取られた。

そのまま私の指を使ってクリームをすくい、顔の前に持ってくると……。



「こうやって、シワに沿って塗り込むんだよ」
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