【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
優しく私の唇に塗り始めた。



「こんなもんかな。余った分はハンドクリームにしていいから」

「ありがとう」



手が解放されるも、心臓の音は速いまま。


直接触られたわけじゃない。見つめていたのは口元。

私の唇がカサついてたのを心配して、親切心でやってくれただけ。

特別な意味なんて……っ。


手の甲にクリームを塗り広げ、ドキドキから気を逸らす。



「放課後は、何も予定ないんだっけ?」

「へ? あぁ……うん」

「なら決まりだな」



リップバームをポケットにしまった紅耀くん。

きょとんとする私と目を合わせると、フッと口角を上げて……。



「町案内してあげる」







放課後。紅耀くんと裏門で落ち合い、近くのドラッグストアに足を運んだ。



「ここ、前はハンバーガー屋さんだったんだけど、覚えてる?」

「覚えてる! よく家族で食べに行ってた! 閉店したの?」

「ううん、隣の学区に移転したんだ。今は小学校の近くにあるよ」
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