【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
「──……ちゃん、こーちゃんっ」



トントンと肩を叩かれて我に返る。



「ん? どした?」

「こーちゃんが使ってるのって、このシリーズだったよね?」



隣の陳列棚を指差されてドキッと心臓が鳴る。



「ごめんね、もしかして疲れてた? 休憩する?」

「ううんっ、大丈夫。少し感傷的になってただけだから……」



誤魔化すつもりだったが、余計に心配をかけると思い、紅耀くんには悪いけど真相を話すことに。

すると、穏やかだった彼の眉間にシワが刻まれて……。



「ひどい、いくら友達だからって、そんな言い方……」

「でも、本当のことだから……」

「そんなことない!」



両肩をガシッと掴まれた。



「赤は赤でも、色んな赤があるから。似合うやつ絶対あるから大丈夫だよ!」



力強く励まされると、口紅コーナーに連れていかれた。



「多分浮きそうって言ってたの、肌と髪に合わなかったからだと思う」

「顔立ちじゃなくて?」

「うん。それも多少は関係あるかもだけど、あれ、紫よりの赤だったから。オレンジよりの赤ならいけるかも」
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