【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
「うわー……再会してその態度はひどいな。頑張ったな紅輝」

「ほんと、クズ中のクズね」

「ク、クズ?」

「ええ。2年の頃、松木弟とクラス委員やってたんだけど、ギロギロ睨まれてね。すれ違いざまに耳元で『調子に乗るなよ』って囁かれたの。全然面識ないのによ⁉ 怖すぎて思わずヒィッて悲鳴上げちゃった」



口を挟む余地もない超早口。まるでせき止めていた水が一気に流れるかのよう。

真面目で優しい郁恵ちゃんがここまで言うってことは、相当性格に難があるのか……。



「外面が良かったから、男子ウケと先生ウケが抜群だったのよね。まぁ、大翔は騙されなかったけど」

「紅耀もな。あの人のこと、すっげー目の敵にしててさ。目が合ったらおしまいレベルで怖かったんだよ」



彼女の裏の顔を知り、再び胸騒ぎがした。


いくら悪人でも、人のせいにするのは良くない。

けど、もしさっきの話の通りなら。


紅輝くんが熱を出したのは、彼女に会って古傷が疼いたせいなのかもしれない──。
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