【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
手と顔を激しく横に振って否定する。

紅輝くんのことは好きだけど、面倒見のいいお兄さんって感じだから、恋愛としての好きではないんだよね。


しかし、「……ふーん」とそっけない返事。

この反応、なんか前にも見たような。



「ピッタリくっついてたから、てっきりいちゃついてたのかと思った」



ドクンと心臓が不吉な音を立てた。



「寝てて動けなかったとか?」

「んーと……寝てたというより、休んでたといいますか……」



信号が青に変わり、速歩きで渡る。


どうしよう、本当のことを言ったほうがいいかな。


この様子だと、紅輝くんから何も聞かされてないっぽいし。

山路さんの名前を出しても、郁恵ちゃん達と同じように説明されるだけだと思う。


でも……。



『あの人のこと、すっげー目の敵にしててさ』



もし会っていたとしたら、2度も嫌な記憶を思い出させることになる。

場合によっては、紅輝くんが悲しんでいたのを知ることにも。


テストが終わったばかりなのに、気分を悪くさせたくない。


誤魔化そうにも言葉が見つからず、黙り込んでいると……。



「……付き合ってもないのに、あんなことするなんて」
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