【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
そうだ。もしあの場に紅耀くんじゃなくて、紅輝くんのことを好きな子がいたら。きっとショックを受けていたと思う。

たとえ友達でも男女。あれだけ密着していたらカップルだと思われかねない。



「……私、最低だ」



俯き、スカートを握りしめる。


濁さず話すべきだった。聞いていて心が痛くなる内容でも。

どんな気持ちを抱くのかは、紅耀くんが決めること。私が決めることじゃない。


嫌な気分にさせたくないって思ってたけど……本当は、自分がそういう気分になりたくなかっただけ。

──好きな人の、怒りと敵意に満ちた姿を見るのが嫌だったんだ。



「……俺のほうが、最低だよ」



普段よりワントーン低い声が耳に届き、顔をパッと上げる。



「プライドを守るために嘘ついて、無茶なお願いを聞いてもらって。こーちゃんの優しさにつけ込んだ。今も、紅耀に幻滅して俺に振り向いてくれないかなって思ってる」



膝に置いた拳の上に手のひらが重なる。



「俺なら、こんなふうに泣かせない」

「紅輝く……っ」

「俺じゃ、ダメ?」
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