【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
顔の前で手を合わせて謝ると、急ぎ足で教室から出ていった。


……呼び出しくらいなら図書室とかで時間潰せるんだけどな。

でも、紅輝くん優しいから、長引くと申し訳ないって思ったのかも。


瞬時に緊張が全身に走り、ややぎこちない足取りで階段を下りた。待ち合わせ場所に近づくにつれて胸の鼓動が速くなる。


……あ、まだ来ていないみたい。


裏門に誰もいないのを見てホッとしたその直後。



「小夏」



突然背後から声をかけられて肩が跳ね上がった。



「お疲れ」

「っお、お疲れ、さま……」



落ち着いた表情と声のトーン。そんな彼に途切れまくりの口調とガチガチの表情で返す私。

今朝と随分態度が違うけど……彼のことが苦手というわけではない。



「紅輝は?」

「なんか、呼び出されちゃったって」

「またか。本当懲りないな、みんな」



彼との間を少し空けて帰路に就く。


私にとって松木兄弟は小学校時代の同級生。


一方校内ではイケメン双子という扱いで、女の子達にとってはアイドル的存在。

郁恵ちゃんによると、甘々な紅輝くん派とクールな紅耀くん派に分かれているのだそう。


さっきの『お呼び出し』というのも、告白という意味の隠語。紅耀くんいわく、1年生の頃から毎月告白されているんだとか。
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