【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
曇りのない真っ直ぐな目。だけど声は少し震えている。

──本気だ。



「私は……っ」



突然の告白に言葉が詰まる。


転校が決まった時、不安でいっぱいだった。


地元でも、必ずしも知り合いがいるとは限らない上に、2年生というタイミング。

既に出来上がっている輪の中に入れるのだろうかと、引っ越す日までなかなか寝つけなくて。


そんな私を、紅輝くんは優しく迎えてくれた。


自信を失っていた時、悩んでいた時。寄り添って励ましてくれた。

辛い過去も乗り越えて、告白してくる人達1人1人と誠実に向き合っている。


非の打ち所がないくらい、とても素敵な人。


だけど──。



「……紅耀が好き?」

「…………うん」



紅輝くんの“好き”と、私の“好き”は、一致しないんだ。



「ごめんなさい、気持ちは嬉しいけど……っ」

「いいんだよ。返事してくれてありがとう」
< 60 / 70 >

この作品をシェア

pagetop