【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
たどたどしく松木くんママに挨拶した。

肩掛けバッグと大きなトートバッグ。これからスーパーに晩ご飯を買いに行くらしい。



「紅輝か紅耀に用事?」

「はい。紅輝くんに……」

「こーちゃーんっ!」



パタパタと階段を駆け下りる音が響いて、紅輝くんが現れた。



「ごめんね〜、わざわざ来てもらって」

「ううん。もう、準備できたの?」

「バッチリ!」



親指と人差し指で輪っかを作った紅輝くん。
その隣では松木くんママが不思議そうに首を傾げている。



「準備? パーティーでもするの?」

「違うよ、明日和訳当たるから教えてもらおうと思って。ノートもまだ返せてないのあるし。ね、こーちゃん」

「は、はいっ」



嘘の理由を述べる紅輝くんに、やや罪悪感を抱きながらも頷く。


誘導するとはいえど、家族に見つかったら詮索されるかもしれない。

その場合は、勉強する約束をしていたという設定で乗り切ろう。

と、掃除の時間に話し合っていたのだ。


なので、私服姿だが、カモフラージュでスクールバッグを持参している。もちろん中身は空っぽだ。
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