【短編】お向かいの双子くんは私のことがお気に入りらしい
ドアの隙間から覗く、クールで端正な顔。

落ち着いていた心臓が早鐘を打ち始める。



「じゃ、俺はこれで。日和ちゃんのとこに行ってきまーすっ」



任務を終えた彼が「バイバーイ」と手を振る。


えええ⁉ もう行っちゃうの⁉

嘘でも勉強教える設定だったんだし、せめて5分くらいは一緒にいてほしいよぉぉ。


行かないで〜〜と目で訴えていると、頭の横からにゅっと腕が伸びてきた。



「手、出すなよ」



紅輝くんの肩を掴み、低音ボイスで呼び止めた紅耀くん。

少女漫画の世界だったら胸キュン間違いなし。
でもそれ、どちらかというと私のセリフ……。



「出すわけないだろ、迎えに行くだけだよ」

「どこに」

「学校。毎年この時期は5時まで運動会の練習してたじゃん。忘れたの?」



呆れたように紅輝くんが溜め息をついた。


背中にものすごく冷たくて刺々しい空気を感じる。これはまだ疑ってるっぽいな。

いくら傷心中でも、そんなすぐ別の人に乗り換えることはないと思うけど……。
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