悲劇のフランス人形は屈しない2
第三章 夏
友達問題
榊が転校して来てから数か月が経った今でも、金髪の不良は学校で有名だった。女子の間で人気のお三方でさえ、規律に沿った制服を着ているというのに、榊は規則を思いっきり無視している。色の濃いTシャツを着てはワイシャツを全開にしているし、33度を超える真夏の日にはタンクトップ一枚で登校している。頭の後ろで結ばれた相変わらず派手な金髪は、教師に注意されていないのか、注意されても無視をしているのか、一向に落ち着く気配はない。
しかし、最初は不良と思われ敬遠されていた榊だが、部活に入った途端、同性の友人がかなり増えた。
「コミュ力の塊め…」
同じバスケ部員と騒がしく挨拶をしている榊の隣で、私はぼそりと呟いた。
中学時代バスケ部だった榊が入部したことにより、試合でも初戦敗退を免れるようになったらしい。そのおかげか、にわかにファンもでき、教師からも一目置かれるようになっている。
「なに、羨ましいの?」
にやりと笑いながら榊が言った。
(羨ましいですが!)
私はそう言いたいのをぐっと我慢した。
正直、白石透になる前も友達の作り方が分からなかった。ドラマや漫画では、学校に行きさえすれば自然と仲の良い友達が出来ている。しかし、現実はそうもいかなかった。
(白石透の設定で友人がいないのだと思ってたけど、私の力が及ばないせい…?)
教室内を見渡し、友人候補になりそうな女子を探す。
郡山や藤堂そして彼女らの取り巻きを抜いたとしても、まだ数名はいるはずなのに、なぜ彼女らと私は一度も会話をしたことがないのか。
(そういえば、伊坂さんの時も、彼女から話かけてくれたんだよな…)
私は頭を抱えた。
長い間蓋をしていた真実に気づいてしまった。
(私、友達作りが出来ない人…)
隣を見ると、榊がクラスメートと楽しそうに、夏休みをどう過ごしたかを話している。
(夏休みを一緒に過ごした友人もいなければ、それを話す友達もいない…)
私は机に突っ伏した。
(友達が榊だけって、どうなの私…)
しかし、榊が隣にずっといてくれるおかげで、いいことがあった。
それは、藤堂と郡山の虐めがなくなったことだ。榊が転校して来てから数日間は、何度か経験したものの、それ以降、ほとんどと言っていいほどない。私が一人の時を狙って、暴言を吐かれることはあっても、以前のように落書きや教科書に大っぴらなイタズラはなくなった。
一躍有名人となった転校生の側にいつもいる私に、手が出しにくくなったということだろうか。
(悔しいが、あんたのおかげね)
子供のように男子とじゃれあっている榊を見つめる。
しかし、この時の私は気づいていなかった。この、虐めが減ったことが次の災難を近づけていることに。
しかし、最初は不良と思われ敬遠されていた榊だが、部活に入った途端、同性の友人がかなり増えた。
「コミュ力の塊め…」
同じバスケ部員と騒がしく挨拶をしている榊の隣で、私はぼそりと呟いた。
中学時代バスケ部だった榊が入部したことにより、試合でも初戦敗退を免れるようになったらしい。そのおかげか、にわかにファンもでき、教師からも一目置かれるようになっている。
「なに、羨ましいの?」
にやりと笑いながら榊が言った。
(羨ましいですが!)
私はそう言いたいのをぐっと我慢した。
正直、白石透になる前も友達の作り方が分からなかった。ドラマや漫画では、学校に行きさえすれば自然と仲の良い友達が出来ている。しかし、現実はそうもいかなかった。
(白石透の設定で友人がいないのだと思ってたけど、私の力が及ばないせい…?)
教室内を見渡し、友人候補になりそうな女子を探す。
郡山や藤堂そして彼女らの取り巻きを抜いたとしても、まだ数名はいるはずなのに、なぜ彼女らと私は一度も会話をしたことがないのか。
(そういえば、伊坂さんの時も、彼女から話かけてくれたんだよな…)
私は頭を抱えた。
長い間蓋をしていた真実に気づいてしまった。
(私、友達作りが出来ない人…)
隣を見ると、榊がクラスメートと楽しそうに、夏休みをどう過ごしたかを話している。
(夏休みを一緒に過ごした友人もいなければ、それを話す友達もいない…)
私は机に突っ伏した。
(友達が榊だけって、どうなの私…)
しかし、榊が隣にずっといてくれるおかげで、いいことがあった。
それは、藤堂と郡山の虐めがなくなったことだ。榊が転校して来てから数日間は、何度か経験したものの、それ以降、ほとんどと言っていいほどない。私が一人の時を狙って、暴言を吐かれることはあっても、以前のように落書きや教科書に大っぴらなイタズラはなくなった。
一躍有名人となった転校生の側にいつもいる私に、手が出しにくくなったということだろうか。
(悔しいが、あんたのおかげね)
子供のように男子とじゃれあっている榊を見つめる。
しかし、この時の私は気づいていなかった。この、虐めが減ったことが次の災難を近づけていることに。