悲劇のフランス人形は屈しない2
バレンタインデー
2月に入ると少しずつ春の陽気が見え隠れするようになった。相変わらず気温は低く、雪が降る日もあったが、それでも日差しが暖かく感じる季節となった。校内は、ピンク色やハート形の飾りが目立つようになり、男女共に浮足立っていた。
「白石さ~ん!」
登校中に後ろから藤堂の明るい声がこだました。聞こえなかった振りをしようとしたが、藤堂は私に追いつくとすぐに腕を絡めた。
「ごきげんよう」
とりあえず、礼儀としての挨拶だけはしておく。
「来週の土曜日、空いているかしら?バレンタインのパーティーを開こうと思うの」
頬を紅潮させながら藤堂は嬉しそうに言った。
「あら、残念。来週は妹の誕生日で…」
そこまで言って私は、はたと止まった。まどかの誕生日があるとは言え、藤堂のパーティーをまた断ったら、怒り心頭の母親が帰国してしまうかもしれない。
「…ですので、少しだけ参加させて頂くわ」
「あのお三方は、白石さんの方から誘って頂けない?」
藤堂が本題に入った。
「蓮見さまに連絡しても、最近返信がないの。学校でも中々見つけられないし」
(それは避けられてんじゃ…)
「必ず一緒に来てね」
藤堂はそう言うが早いが、取りまきを見つけた途端、私から離れて行った。
「また面倒なことを…」
「白石ちゃ~ん!」
藤堂が視界から消えたと同時に、まるでタイミングを見計らったかのように蓮見が目の前に飛び出して来た。
(もっとマシな登場はないのか)
「…ごきげんよう」
今回も形ばかりの挨拶をする。
「うわ、超不機嫌!」
顔に出ていたのか、それを見た蓮見が笑った。
しかし、ちょうどいいことに天城と五十嵐も一緒にいる。
「今週の土曜日に、藤堂さん家でパーティーを開くらしいの。どうかしら?」
「とうどうさんって誰?」
隣に並んだ五十嵐が、興味なさそうに聞いた。
「あなたと同じA組の…ってあれ、デジャブ?」
以前も同じやり取りとした気がする。
「俺はパスかな~」
蓮見は頭をかいた。
「あの子苦手なんだよね~。ちょっと怖い」
「俺もパス」
天城も無表情のままそう言うと、さっさとその場から離れて行った。
「おい、待てってー」
その後ろを追いかけるように蓮見も校内へ入っていく。
「行くの?パーティー」
隣で私の歩幅に合わせて歩いている五十嵐が聞いた。
「ええ。忙しいけど、行かないと後々面倒なのよ」
「大変だね」
五十嵐はそう呟くと、しばらくの間沈黙が流れた。
「ねえ。誰かにチョコ作ったりするの?」
ふとそんなことを聞かれ、私はふっと笑った。人気者の男子と言えど、チョコに関心があるのが可愛く思えてならない。
「そんな暇あったら、妹の誕生日の準備をするわ」
「僕にくれないの?」
視線を感じて、私は五十嵐の方を見た。
前髪で目が隠れているため、本気で言っているのか分からない。
私は思わず吹き出した。
「大丈夫。あなた達なら、歩いているだけでチョコ貰えるから」
(やはり子供ね)
五十嵐は私の背中を見送りながらぼそりと呟いた。
「本気で聞いたんだけどな」
「白石さ~ん!」
登校中に後ろから藤堂の明るい声がこだました。聞こえなかった振りをしようとしたが、藤堂は私に追いつくとすぐに腕を絡めた。
「ごきげんよう」
とりあえず、礼儀としての挨拶だけはしておく。
「来週の土曜日、空いているかしら?バレンタインのパーティーを開こうと思うの」
頬を紅潮させながら藤堂は嬉しそうに言った。
「あら、残念。来週は妹の誕生日で…」
そこまで言って私は、はたと止まった。まどかの誕生日があるとは言え、藤堂のパーティーをまた断ったら、怒り心頭の母親が帰国してしまうかもしれない。
「…ですので、少しだけ参加させて頂くわ」
「あのお三方は、白石さんの方から誘って頂けない?」
藤堂が本題に入った。
「蓮見さまに連絡しても、最近返信がないの。学校でも中々見つけられないし」
(それは避けられてんじゃ…)
「必ず一緒に来てね」
藤堂はそう言うが早いが、取りまきを見つけた途端、私から離れて行った。
「また面倒なことを…」
「白石ちゃ~ん!」
藤堂が視界から消えたと同時に、まるでタイミングを見計らったかのように蓮見が目の前に飛び出して来た。
(もっとマシな登場はないのか)
「…ごきげんよう」
今回も形ばかりの挨拶をする。
「うわ、超不機嫌!」
顔に出ていたのか、それを見た蓮見が笑った。
しかし、ちょうどいいことに天城と五十嵐も一緒にいる。
「今週の土曜日に、藤堂さん家でパーティーを開くらしいの。どうかしら?」
「とうどうさんって誰?」
隣に並んだ五十嵐が、興味なさそうに聞いた。
「あなたと同じA組の…ってあれ、デジャブ?」
以前も同じやり取りとした気がする。
「俺はパスかな~」
蓮見は頭をかいた。
「あの子苦手なんだよね~。ちょっと怖い」
「俺もパス」
天城も無表情のままそう言うと、さっさとその場から離れて行った。
「おい、待てってー」
その後ろを追いかけるように蓮見も校内へ入っていく。
「行くの?パーティー」
隣で私の歩幅に合わせて歩いている五十嵐が聞いた。
「ええ。忙しいけど、行かないと後々面倒なのよ」
「大変だね」
五十嵐はそう呟くと、しばらくの間沈黙が流れた。
「ねえ。誰かにチョコ作ったりするの?」
ふとそんなことを聞かれ、私はふっと笑った。人気者の男子と言えど、チョコに関心があるのが可愛く思えてならない。
「そんな暇あったら、妹の誕生日の準備をするわ」
「僕にくれないの?」
視線を感じて、私は五十嵐の方を見た。
前髪で目が隠れているため、本気で言っているのか分からない。
私は思わず吹き出した。
「大丈夫。あなた達なら、歩いているだけでチョコ貰えるから」
(やはり子供ね)
五十嵐は私の背中を見送りながらぼそりと呟いた。
「本気で聞いたんだけどな」