総長様は姫の姿を誰にも見せたくないようです。

学校初日〜雪翔side〜

今日はいい天気だから、とても眠くなる。いつものたまり場で寝ようかと思っていたら碧と匠が来た。
「雪翔。旭と陽が来てるぞ」
「なんか報告したいことがあるって言ってたな」
「分かった。いつものたまり場で話そう。碧と匠も来るか?」
「ああ。行く」
たまり場に着いて一番初めに話し始めたのは碧だった。大方、話を聞きたくてウズウズしてたんだろう。
「んで、何の話だ?」
「瑠衣奈さんと桃々さんに言われて。報告しに来たんですけど、優姫さんが俺らのクラスに来ました」
今、こいつらはなんて言った?
優姫って言ったか?優姫って言ったよな。どういうことだ?
「はっ?優姫が?」
「はい。瑠衣奈さんたちが言うには親に変装しないと入れてあげないと言われたらしく黒髪でしたが、瑠衣奈さんに桃々さんが見間違えるはずはないかと」
ッハ優姫がホントに帰ってきたのか?ヤベェ、ガチで嬉しい。今すぐに会いに行きたいが瑠衣奈達が2人を差し向けた以上何かあるのだろう。我慢するか。
「俺らが救われたあのときのEmmaの言葉と全く同じ言葉を言われましたし、俺らも本物だと思います」
「...それを伝えに来たのは分かるが、どうして桃々達から2人して離れた?」
匠から殺気が出ていてそれが旭と陽に向かっているのが面白くてしょうがない。匠は桃々、碧は瑠衣奈の事となるとすぐに殺気が出る。まぁ俺も優姫の事となるとすぐに殺気は出るから他人事のように笑うのは堪らえよう。
「す、すみません。ですが、桃々さんが2人で報告に行ってきてと言ったので...」
匠と碧の殺気を長い時間、一身に受けているのは流石に可哀想だな。止めるか。
「...碧、匠。そこまでにしてやれ。それに瑠衣奈と桃々なら言いそうなことだろう...それで?他に伝えろと言われたことがあるんじゃないのか?」
旭と陽が目を見開く。やっぱりか。
「やっぱり雪翔さんはすごいですね。そうなんです。実は瑠衣奈さんたちにもう1つ言ってきて欲しいと言われたことがあるんです。」
「...なんだ。それは」
「雪翔さんだけじゃないんですけど、碧さんと匠さんにもしばらくの間は2Aのクラスに近づくことはやめて欲しいと言うことです。」
「えっと、つまり、優姫さんを含めた瑠衣奈さんや桃々さんにも当分は会いに来るなということです。」
『はっ?』
「で、でもそれはクラスにってことで家へ訪れることは問題ないから大丈夫でしょと言っていました。」
「当分と言っても、2週間程度で済むとも言っていました。何でも、理事長に掃除代行者を頼んであると言われたため、その掃除代行者の任期が終わる2週間後までは優姫さんにそこで住んで欲しいと頼まれたそうです。なので、俺らもあっちの総長に殴り込みに行くようなこともしませんでした」
「はっ?ちょっと待って。優姫がアイツと同じ家で暮らすってことか?」
「期限付きですが、そうなりますね」
「...優姫はなにか言っていたか?」
「優姫さんは、浮気にならないか心配だそうです。でも、瑠衣奈さんと桃々さんが雪翔さんは心が広いから大丈夫だと言っていました。」
「いくら、この学園の経済的支援をしているSAOTOMEグループの令嬢だからといっても理事長に逆らうことは出来ないと」
「それと、アイツらにバレたら最悪、優姫さんが傷つけられるので、それまでは優姫さんとの関係を明かさないようにしてほしいとも」
「アイツらにはとても良く似た顔や考え方を持っているが優姫さんはEmmaのいとこであり、違う人物だと言ったそうです」
「分かった。それが優姫のための作戦であるのなら付き合おう。碧も匠も良いな?」
「分かったよ。お前のその「良いな?」はほぼ強制だしな」
「そうだな。桃々とあまり会えなくなることは我慢しよう。俺ら、selasの大切な姫のためだ」
「分かりました。では、瑠衣奈さんと桃々さんに伝えてきますね」
「ちなみに、優姫さんの席の周りはselasで固めてあるので、安心を」
「あぁ。ありがとう。俺らがそばで守れない分よろしくな」
『はい!』
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