メガネをはずしちゃいけません!
パアンッ



静かな教室に響き渡る乾いた音。



それは、
私が山神帝の頬をたたいた音だと気づくのに
時間はかからなかった。


目の前には頬を抑えて驚いた顔をする山神帝。

もう、今の私は誰にも止められない、そう思った。



美奈「あんたみたいな人間が大っ嫌い。そうやってメガネかけてるだけで地味だのブスだのレッテル貼って。ほんと何様?こっちはいい迷惑だっつーの!人の気持ちも考えられないくせに、見かけばっかり気にして大事なもんなんにも持ってないくせに、えらそーなこといってんじゃないわよ!このタコ男!二度と私の視界に入るな!」



気づけばそう叫んでいた。


その他女子「ちょっ、あんた!帝様になんてことしてくれてんのよ!」


美奈「うるさい!何が帝様よ!聞いてるこっちは恥ずかしくてしょうがないわ!気持ち悪いからやめてください。」


一応先輩なので、語尾を敬語にする、という理性が残っていることを褒めてほしいわ。えらいぞ美奈!


美奈「では、私、日誌提出しなきゃいけないので失礼します。」


その他女子「はあ?ふざけんなよ。帰っていいと思ってんの?」


美奈「思ってますけどなにか?」


その他女子「痛い目みないとわかんないわけ?」


そういって睨んできた。


これはまずいかも…

…もう遅いか。


さらば私の平凡ライフよ。明日からいじめの日々よこんにちわ。


諦めけていると


帝「おい待てよ。」


グイッ



山神帝が私の腕を引っ張った。



帝「お前、名前は?」


は?


なんで視界にも入れたくないやつに名前教えなきゃなんないんだよっ!


美奈「あなたが知る必要のないことでしょ。ほっといてください。てか触んな気持ち悪い。」

あ、本音でちゃった。



その他女子「あんたいい加減に___」


美奈「!」



女が殴りかかってきた。

もうだめか、と思ったら


帝「やめとけ」

思いもよらない言葉が聞こえ、



その他女子「でも…」



帝「こんなやつほっとけ。それより、ほかの教室探すぞ。下校時刻すぎたら困るだろ。」



その他女子「ッ…わかったわよ。」



と、女はしぶしぶ折れた。


ふう…助かった。




でも確実に目つけられたな。うん。





美奈「では失礼します。」




そういって私はさっさと教室を後にした。




_______




帝「…」



頬をさすりながら
私の後ろ姿をじっと見つめる影に気づくこともなく。
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