君の心を奪いたい
「あなたのこともっと知りたいな」
だらしなく顔を赤らめ、泥酔状態の男。
毎回思うけど男って馬鹿だな。ちょっと女に優しくされたからって仕事の愚痴漏らして機密情報流しちゃうんだもん。
「ミサナちゃーん、それでさ…」
私に触れようとした手前、男は急にバタッと倒れた。
私は事前に効果的面の睡眠薬を投与ていた。
男のパソコンを取り出し、データを写しとる。
よし、これで帰れそうだ。
「何してるの?」
振り返ってはいけない。
男の声がする。気配を感じ取れなかった。
いつの間にいたの?
即座に白リン弾を投げる。
念の為顔がわからないように私はマスクをしていた。
「逃さないよ」
男は白い煙が立つ中でも私を追いかけて来た。隙を見せたら追いつかれる。顔をばれてはいけない。スパイにとって致命傷になる。
窓から飛び降り仲間の援護を待つ。
「乗れ!」
上司のハルトが私を急かす。
「わかってるわよ」
ヘリに乗り込みどうにかして私は逃げ切ることに成功した。

「お前らしくないじゃんどうした?」
ハルトはいつものヘラヘラした口調で私に問いかけた。
「データ抜き取った後に入室して来た男がいて
 急いで逃げて来たの」
気配を全く感じ取れなかった
何者なんだろうあの男

「あーあ、逃げられちゃったか」
窓をぼーっと眺める男。
「ジン様!」
焦ったように息を切らしながらまた、新たな男が入って来た。
「勝手にうろちょろされては困ります!今日は講談があるでしょう!ってうわぁ」
倒れているa国の国官房長官を目の当たりにして
腰抜けする。
「レイ驚きすぎだろ、ミサナに会えると思ったんだけどなー」
「ミサナって、あの有名なスパイじゃないですか、危ないですよ!ジン様!ミサナは仕留めた相手を殺すって噂があるんですから」
「そうそう、レイよく知ってるじゃん、にしたって、顔も見れなかったなぁ」
男は薄笑いを浮かべた。

「でかしたぞミサナ」
国のお偉いさん方は嬉しそうに笑った。
にこやかにマスク越しでありがとうございます。なんて私は笑うけど、国のために貢献したいとかそんな気持ちは微塵もない。ただ、愛する妹のためにこの仕事をしている。
妹のリナは生まれつき病気があり、手術をするためには多額の金がかかる。両親は私が生まれてすぐに事故で他界。妹を救えるのは私だけだ。

すぐに退室して、宿舎に戻る。
食堂に向かうと仲間達に私は詰められた。
「ミサナ!A国にジン来たんでしょ!会った?」
「お土産は?」
おいおい、任務は観光じゃないんだぞ?と思いながらため息をつき席に着く。
「いや、そんな余裕なかった」
えーと落胆する仲間達。ピッとテレビを着けると長身の男が
映し出されていた。私はそれを見てギョッとした。
「きゃージン様よ!」
周りは色男にメロメロな様子だった。
バシンッ勢いよく机を叩く
「あり得ないんだけど、ジンの元に任務で行った先輩達は消息不明だしB国の情報取れなくて上は減給するとか言ってるんだから」
水を差す発言をして私は食事も摂らず外に出かけた。
「何あれ、感じ悪〜」
「ミサナって何なの?確かに任務は全て遂行するし優秀だけどさお金のことしか考えてないよね。」
次々と飛び交う言葉の矢、
「おいお前ら、何騒いでるんだ」
「ハルト様!」
一気に辺りは静まり返る
「ミサナ見なかったか?」
「ミサナなら出かけて行きました」
ハルトはため息をついてミサナを追いかける。

「やっぱりここにいたか」
足音が聞こえたから振り返るとそこにはハルトがいた。
「何?」
暗闇の公園でランニングをしていた足を止める。
「上がお前を呼び出して急遽来て欲しいらしいんだ。来れるか?」
「任務?」
「…ああ」
下を俯いて言われる。元気がないな…
「低額なの?」
「たくっ、お前はいつもお金のことばっかだな」
やれやれと言った感じで笑われてしまった

「失礼します。」
「連勤で悪いねミサナ君
 ハルトから聞いてると思うが新しい任務だ」
「はい。」
「お前も知っていると思うが、ジンの元に行ってどうにかしてA国の情報を抜き取れ!」
興奮気味で肩を震わせる上層部。
私は正直こいつらが嫌いだ。何人ものスパイの女達を喰ってきた。
お気に入りのスパイがジンのところに送り出されて消息不明だもんそうなるか。
他国の情報を抜き取って優位な外交をする。
それが我が国の政治の仕方だ。
「ミサナ今夜は空いているのか?」
ニヤニヤしながら聞いてくる連中
「いいえ」
スパッと切り捨て睨みつける。
「何だその態度は」
思い通りにいかないとすぐにキレ出す上層部
「やめろ」
ハルトが魔を刺す
「ミサナを敵にしたら終わりですよこの国は」
失礼しますと言って2人で部屋を出た。
いつもハルトは私の側にいてくれる
私が入社したときから何かと悩みも聞いてくれるいい奴だ
「俺も今回は付いてくよ流石に」
「…どうして?それはジンだから?」
「さすがに相手が相手だからな」
いつもみたいにおふざけがないハルトは初めて見る
「ミサナ、送り出されたスパイはジンに殺されたんだ。あいつは恐ろしい奴なんだよ。」
「知り合いみたいに話すのね。」
ピタッと急にハルトは止まった
「…そうだ、あいつは…」
ハルトが話そうとした瞬間グルルルルッと私のお腹が鳴った
「お前のお腹の鳴りやばくね?」
ハルトはその場で吹き出した
「そういやここ数日あんまり食べてなかった」
「明日から任務で集中するとご飯食べなくなるから今日爆食いしよ」
「お前って少し変わってるよな」
「そうかな」

「今回ばかりはミサナ、寝てもらうことになるかもしれないぞ」
飛行機で何を言い出すんだこの男は
血の気が引いていくのがわかる
「嫌」
即答。
「ははーん、お前処女だろ。」
「デリカシーないわね、セクハラで訴えるわよ!」
飛行機がプライベートジェット機でよかった
多分相当うるさいと思う
「図星か、逆に今までよく男騙せたな」
「そりゃ色々相手の性格考えて行動してるから」
「ただ今回は、難航しそう…」

「練習相手になってやるよ。」
急に手を重ねてきたハルト

手をすっと離しハルトを見つめる
「ジンへ送った先輩達は床入り上手だったでしょ
 ハニトラなんて尚更わかりやすかったと思うよ」
ハルトはふっと笑った
「で、どうやって堕とすの?」
「今までと違う女を演じる。あんまり計算して行動するとこういうタイプはバレるからね。」
「今回前払いしてもらったのは死んでもいい覚悟があったから。これで妹の手術がようやくできるしね。」
私は妹の写真を見つめながらそういうと、
「万一お前はこうやって押し倒されたらどうするの?」
視界が歪んで天井とハルトの姿が見えた。
「俺は今までお前が男と寝なかったことを不思議に思ってる」
「普通だよ
 好きでもない男とそういうことしたくない」
ハルトを押し返して、プライベートジェット機にある自室へ戻った。
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