一段飛ばしのハイヒール
ハイヒールと嘘
今日、今日こそは。
本当のことを言うんだ。
……嘘から、卒業するんだ。
ドギマギする心臓をおさえつつ、私、本谷 由花は彼氏の間宮 邦彦さんがひとり暮らす部屋にいる。
玄関の外。
コツコツと固い革靴の足音が近づいてくる。
鍵穴に鍵を挿し込む音。
(帰って来た!)
きっと本当なら嬉しくなる瞬間だと思うけれど、私は生唾をごくんと飲んで、深呼吸をした。
玄関ドアが開いた。
間宮さんが、
「ただいま」
と、私を見た。
「おかえりなさい、待ってたよ」
先日渡されたこの部屋の合鍵を使う時、ときめきと罪悪感が混ざった、なんとも言えない気持ちになった。
「あのね、間宮さん、私……」
と切り出したけれど、
「部屋で由花が待ってくれているって、いいなぁ」
と、間宮さんが私をぎゅっと抱きしめた。
すっきりと甘い間宮さんの香りに包まれて、私の胸の中のときめき成分が爆発した。
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