一段飛ばしのハイヒール
幸せと本当
間宮さんと別れたあの夜から、五年が過ぎた。
私は大学を卒業して。
学習塾の講師になっていた。
教えることは、楽しい。
生徒が質問してきた時。
その答えを導いて、彼らが理解したんだな、とわかる瞬間。
目をキラキラ輝かせているところを見ることが、大好きだ。
「先生、さようなら〜」
「はい、気をつけて帰ってね」
いつものように生徒全員を見送り、簡単な連絡事項などを済ませた後。
私も塾のあるビルを出て、駅に向かって歩き出した。
駅に着くと、駅ビルの一階にあるカフェから良い香りがした。
(コーヒー、飲みたいかも)
カフェの前で少し迷う。
さっきも職場でカフェインは摂取したから、本当は少し控えたほうが良いんだけど。
コーヒーの香りが私を誘惑する。
「……由花?」
突然名前を呼ばれた。
驚いたのは、名前を呼ばれたからじゃない。
その呼んだ声のせいだった。