一段飛ばしのハイヒール
「……間宮さん」
かつて私が恋をした人。
そして、騙した相手。
間宮さんは、あの頃と全然変わっていない。
凛々しいスーツ姿で。
髪型が短くなってスッキリしたものの。
あの頃から時が止まったみたいだった。
「やっぱり由花だ」
間宮さんはニコニコ笑って、私にもう一歩近寄る。
私は、うつむいた。
足元を確認する。
ハイヒールじゃない。
動きやすい、ローヒールのバレエシューズ。
(走れる……)
そう思って顔を上げると、
「走って逃げるの、無しだからな」
と、間宮さんが言った。
思わず笑ってしまった。
間宮さんも笑っている。
「……由花、元気だった?」
「うん。元気だよ、間宮さんは?」
「まぁ、元気かな。由花、今から時間ある?」
「えっ?まぁ、帰るだけだから、時間はあるけど」
私達は近所の居酒屋に入った。
カウンター席に並んで座る。