一段飛ばしのハイヒール
「由花とお酒飲むの、変な感じ」
「確かに」
少しの沈黙のあと、私は間宮さんに「ごめんね」と、話しかけた。
「ん?」
「騙してたこと。それに急に音信不通にして、目の前から消えたことも」
「……そうだよ。ショックだったよ、オレ」
間宮さんはそう言っていても、ニコニコ笑っている。
「怒ってないの?」
と尋ねると、
「うーん、もう怒ってない、かな」
なんて、穏やかな顔をしてビールを飲んでいる。
「間宮さん……」
その言葉の続きを、言おうか、言わないでおこうか、少し悩んだ。
あまりにも勝手だと、わかっていたから。
……間宮さん、まだ私、忘れてないよ。
好きな気持ち、ずっと大切に持っているよ。
だから。
だからね。
『もう怒ってない』とか。
私のことを、過去にしちゃうの、寂しいよ。
「ん?」
「……ううん、何でもない」
「何だよ、気になるじゃん」