一段飛ばしのハイヒール
私はそれを無視して、ビールをゴクゴクと飲んだ。
「由花はお酒、強いほう?」
「わからない。あんまり普段から飲まないようにしているから」
「なんで?嫌い?」
「……大人じゃん、これ」
「ん?」
早く手に入れたくて、仕方なかった年齢。
だけど。
手に入れてしまえば、どうしても考えてしまう。
生きた年数が欲しかった理由は。
ただ、近づきたかっただけだから。
間宮さん。
間宮さんのそばにいたかっただけだから。
……社会人の、大人になったはずなのに。
生きた年数が増えても。
隣に間宮さんがいない。
そう実感することが嫌だったから。
ビールも、ハイヒールも。
大人になったことを実感するものは。
私から遠ざけることにした。
「由花、あのさ」
間宮さんは私を見つめる。
「ずっと、伝えたかったことがあるんだ」
「何?」
「また再会出来たら、絶対にこれだけは言おうと思ってた」