一段飛ばしのハイヒール
「?」
間宮さんはこう言った。
「大好きだよ」
「……えっ?」
思いがけない言葉に、耳を疑う。
「あの日、由花が本当のことを話してくれた日。由花は、大好きって言ってくれただろ?」
「……うん、そうだよ」
「オレだって、同じ気持ちだから。由花にもしも新しい恋人がいても、いや、もしかして他の誰かと結婚していても、この気持ちは伝えたかったんだ」
「間宮さん……、私」
間宮さんは「あー、ちょっと引いた?」と、笑ってから、
「ごめんごめん、忘れてくれてもいいから」
と、ビールをまたひと口飲む。
変わらない、と思っていたけれど、間宮さんの目尻にシワが見えて。
過ぎた年月の長さを思い知る。
「忘れないよ」
と、私は呟いた。
それから、
「私、恋人いないし。ましてや結婚もしてないし」
と、早口で伝える。
「そうなの?」
間宮さんの目が大きく開く。