一段飛ばしのハイヒール
「そんなに驚く?」
「だって、オレてっきり……、もう希望はないだろうと思ってたから」
「希望、あるもん」
「……あるんだ?」
間宮さんが嬉しそうな表情をする。
その顔、すごく好き。
「……好きだよ、間宮さん。ずっと、あの頃から今でも」
「嬉しい」
「ハイヒールを履いてなくても……、見つけてくれてありがとう」
「ハイヒール?」
間宮さんはニコニコしつつ、ほんの少し不思議そうな表情になる。
……いいの、わからなくても。
もう必要ないんだもんね?
近づくための道具はいらない。
あの頃、一段飛ばしたところに置いてきたものを。
今の私が取りに戻れたんだ。
間宮さんと手を繋いで、夜の街を歩く。
そっと私の手を包む間宮さんの手が。
優しくて。
あたたかくて。
ふんわりした心地になった。
そして。
あの頃と変わらない、間宮さんの部屋に帰って来た。