一段飛ばしのハイヒール

ちゅっ、ちゅっと甘く唇が触れる。



「間宮……、さんっ、……ちょ、待っ……」



全然話、聞いてくれない。

いや、もういいか?

話なんかしなくても。



だって、絶対に失望されるし。

いや、別れるとか言われるかも。

怒られるかもだし。




「好き……、由花、もうちょっとこのままで……」



間宮さんの甘い声にとろけそうになりつつ、それでも私は自分の中に広がる罪悪感を見過ごせなかった。



「話、聞いてっ……、ってば!!」



ようやくそれだけ伝えて、三歩くらい後ろに下がって間宮さんから離れる。



「……ごめん」



間宮さんはやっぱり寂しそうに、でも今度こそ、話を聞いてくれるみたいだった。



ごめん、は私のセリフなんだ。

心の中で呟く。



深呼吸を二回。



(よし、言うぞ)



「あのね」

「うん」



切り出したものの、次の言葉が出てこない。




玄関に置いてある、ハイヒールを見た。

ヒールが7センチの、淡いピンク色のハイヒール。

< 3 / 17 >

この作品をシェア

pagetop