一段飛ばしのハイヒール
ちゅっ、ちゅっと甘く唇が触れる。
「間宮……、さんっ、……ちょ、待っ……」
全然話、聞いてくれない。
いや、もういいか?
話なんかしなくても。
だって、絶対に失望されるし。
いや、別れるとか言われるかも。
怒られるかもだし。
「好き……、由花、もうちょっとこのままで……」
間宮さんの甘い声にとろけそうになりつつ、それでも私は自分の中に広がる罪悪感を見過ごせなかった。
「話、聞いてっ……、ってば!!」
ようやくそれだけ伝えて、三歩くらい後ろに下がって間宮さんから離れる。
「……ごめん」
間宮さんはやっぱり寂しそうに、でも今度こそ、話を聞いてくれるみたいだった。
ごめん、は私のセリフなんだ。
心の中で呟く。
深呼吸を二回。
(よし、言うぞ)
「あのね」
「うん」
切り出したものの、次の言葉が出てこない。
玄関に置いてある、ハイヒールを見た。
ヒールが7センチの、淡いピンク色のハイヒール。