初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合



『まさかあなたのような妾腹の子がルーファスの妻になるなんて、思ってもいなかったわ』

王命による結婚なのに、ミランダ様は堂々と嫌悪感をあらわにする。

(不敬罪に問われますよ)

と言いたいところだが、私は『はあ』『さようでございますか』とだけを繰り返す。
私の態度が気にくわないのか、ミランダ様のいびりはエスカレートしてしまった。

ミランダ様の命令で、とうとうエラ以外は私の世話をしてくれなくなったのだ。
洗濯や掃除……といっても、私自身がひととおり出来るから困りはしないのだけど、エラに負担がかかる。

「ごめんなさいね、エラ。私についてきたばっかりにこんな目にあわせてしまって」
「とんでもございません!」

エラは平気だと言ってくれるけど、この屋敷の侍女たちはミランダ様の息がかかっている。
だから、エラひとりでは対抗できないのだ。
お腹が空いては力がでないから粗末な食事も気にせずに食べたけど、それも『田舎者はなんでも食べる』と見下される要因になったみたい。

事故の後処理に忙しいままなのか、ルーファス様はお屋敷に帰っていらっしゃらない。
それにお義父様やお義母様とも結婚式以来、お屋敷で顔を合わせることがなかった。

エラが噂で聞いたところでは、それぞれ別の屋敷に愛人と暮らしているそうだ。
ようするに、この屋敷は治外法権というか責任者がいない状態だからミランダ様のやりたい放題を諫める人はいない。
王都の高位貴族の生活なんて理解できないし、私はここにいる意味を見出せなくなっていた。










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