初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
(愛されたいわけじゃないけど、一度も会えないなんて思ってもいなかった)
あれほど夢に見ていたルーファス様との暮らしは、虚しいものだった。
ルーファス様の妻という立場にしがみついても、人生を無駄にするだけ。
だから私は決心した。
(一年だけ、ここで我慢しよう)
王命に従った実績だけ残れば、あとはどうなっても知らない。
もし離婚できたとして、辺境伯家に帰っても私の居場所はないのだから。
できるなら、どこか知らない街か隣国に行ってしまいたい。
もう結婚なんてこりごりだ。貴族なんてやってられない。
私はひとりで生きていく!
***
そして冒頭に戻る。
私は夕景を眺めながら、これまでの日々を振り返る。
そろそろ結婚して一年。自分で決めていた期限が近づいている。
それにしても、王命で公爵家の嫁になった私に対する侍女たちの態度はひどすぎる。
(ハッキリ言った方がよかったのかな)
でも私はお義姉様や侍女たちと対立する『悪役』にはなりたくなかった。
ルーファス様に口うるさい妻だと嫌われたくなくて、見栄を張っていただけだ。