初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合


屋敷内にいても噂は聞こえてくる。
お義姉様の友人たちが私とルーファス様が不仲だとか、ルーファス様が離縁したがっているとか好き勝手に言っているらしい。
もっと困ったことに、ルーファス様の上司である第二王子様はご自分の婚約者様の妹君をルーファス様のお相手にとお考えだたようだ。

(ルーファス様は、ご自分のことをなんて噂されているのか知らないのかな)

生真面目な方だから、噂なんて興味がないのかもしれない。
第二王子のアラン様が縁談にこだわるのは、優秀な部下を手離したくないだけに思える。
だけど婚約者さまのご実家、ブロンベルグ侯爵家は王家と縁続きになるだけでは飽き足らず、このロールザイト家とも姻戚関係になろうとしているのかもしれない。

そういえばアラン王子が進めていた役所を一か所にまとめる構想って、建築業に力を入れているブロンベルグ侯爵家にとって美味しい話だ。
第一王子様の婚約者は隣国の王女様だから、この王国内に強い後ろ盾はない。
ブロンベルグ侯爵は第二王子を傀儡に、王家を乗っ取ろうとしているのかしら。
辺境伯家で育った私は隣国との関係を大切にしたいから、考えすぎかもしれないけど。

「コーデリア様、お夕食をお持ちしました」
「ありがとう、エラ」

ワゴンからひと皿ふた皿と料理並べて、エラはパタパタと部屋から出ていった。
また用事を言いつけられたのだろう。
私について王都にきたばっかりに、エラにはかわいそうなことをしてしまった。

私が形だけの妻というのはまだ許せるが(いや、ホントは許しちゃいけないんだけど)ルーファス様のお考えがわからない。
周りから離婚寸前と思われて平気なのだろうか。
わかっていて私を放置しているなら、ルーファス様を信じて待っている意味はない。

(そろそろ、ここから出て行こうかな)




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