初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
「エラ、この屋敷から出たらあなたはどうする? 辺境領に帰ってもいいし、王都で仕事を探してもいい。ちゃんとロールザイト家の名前で紹介状は書いているからね」
ウキウキとエラに話しかけたら、ひどく思いつめた顔になった。
「コーデリア様、私もお連れください」
「私と一緒にいても、苦労をかけるわ」
驚いたことにエラは実家に帰る気はないし、王都で働く気もないという。
「ずっと一緒に育ってきたんです。これからもおそばに置いてください」
ありがたいし、友だちのいない私にとって心強い申し出だった。
「ほんとにいいの?」
それに涙ぐむエラを見たら、嫌とはいえなくなってしまった。
「わかったわ。これからも私たちはずっと一緒よ」
「はい!」
ふたりであれこれと相談しているうちに、夜はとっぷりと更けていった。
***
いよいよ出発という日、私は大きな封筒を執事長に預けた。
きちんと封をした中には離婚に必要な書類が入っている。
「なにかあったら、ルーファス様にお渡ししてちょうだい」
執事長はチョッピリ怪訝な顔をしたけれど、金庫にしまってくれるみたい。
すぐに必要になるはずよと心の中で思いながら、私はエラを連れて公爵家を出た。