初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合



***



私はコーデリア・ロールザイト。十八歳になったところ。
マチス辺境伯家の次女として生まれ、一年前にロールザイト公爵家の長男であるルーファス様のもとに嫁いできた。

国王陛下と王妃様まで臨席された豪華な結婚式を挙げたのだから、既婚者のはず。

はず……としか言えないのには、理由がある。
なにしろ旦那様とは一度も夜を過ごしていないから。つまり、世間でいう白い結婚だ。
王命での政略結婚とはいえ、本当の夫婦になれないまま時間だけが過ぎてしまった。


ここファンドール王国の家臣団では、財務大臣を務めるロールザイト公爵家と、武力に秀でたマチス辺境伯家が二大派閥を形成してる。文官と武官の対立といったところだろうか。

二年前に隣国との間で揉め事があったときに、国内貴族をひとつにまとめるのが重要だという機運が高まった。
それならばロールザイト家とマチス家が姻戚関係を結ぶのが一番だということになったのだ。

辺境伯家が王命を断れるはずもないし、ロールザイト家としても同じだっただろう。
両家とも不本意ながら、国のために婚約を受け入れた。

ただ私はずっと辺境伯家の領地で暮らしていたし、ルーファス様は王宮に勤めていて多忙な毎日。
両家は不仲という事情もあって、私たちは顔合わせすらしなかった。
その状態で結婚式を挙げたのだから、こんな新婚生活になっても無理はないだろう。

ルーファス様は、王命による政略結婚を押し付けられて迷惑だったとしか思えない。
結婚式から一年経った今、私たちは精神的にも肉体的にも夫婦とは呼べない関係のままだ。






< 2 / 58 >

この作品をシェア

pagetop