初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合




どういう運命のいたずらか、王命でロールザイト家とマチス家の縁談が整った。
コーデリアの婚約話が出るなんて、あの日の出会いは運命だったのだろうか。
あの少女との縁談ならと、すぐに受け入れた。

(コーデリアは覚えてくれているかな)

遠い辺境の地から、仲がいいとはいえないロールザイト家に嫁いでくれるのだ。
コーデリアを優しく迎えようと思っていたのに、現実は思うようにいかなかった。

婚約が決まった時は、アラン王子の側近に選ばれたばかりで忙しかった。
王都から辺境領は遠すぎて、婚約者に会いに行く時間はとれない。
仕方なく、姉のミランダと母にコーデリアのことを任せてしまった。

『彼女の望む通りにして、けっして不自由させないでくれ』

妻になるコーデリアには申し訳なかったが、婚礼を挙げたら休みをもらってゆっくり過ごす予定だった。
王都の案内もしたいし、欲しいものはなんでも与えてやりたいと思っていた。
なにより彼女を妻に迎えて、一緒に暮らせるの日を楽しみにしていたというのに。

現実は甘くなかった。









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