初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合


ロンの言葉はルーファス様に聞こえなかったみたい。
ロンの後ろではエラがおどおどした表情で立ちつくしている。
エラには目の前の男性がルーファス様だとわかったのだろう。私が目配せすると、コクンとうなずいた。
エラはよけいなことを喋るような子じゃない。

「コーデリアがいない⁉」
「は、はい。王都からのお客様はお見えになっておりません」

うまくエラが話を合わせてくれた。

ガックリと肩を落とした旦那様に、慌ててロンが駆け寄った。
よく見たら、ルーファス様のお顔は真っ青だ。

「ぼっちゃま、ご気分がお悪いのではありませんか?」
「ああ、ちょっと……」

そう言うなり、ルーファス様の体がグラリと揺れた。

「あっ」

ロンが何とか支えたが、どうやら意識を失っているみたいだ。
そっと床に寝かせてから額に触ってみると、ものすごく熱い。

「ここから一番近い部屋に寝かせます! 用意をお願い!」
「はいっ」

エラがバタバタと走って行った。





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