初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
「どうやってお部屋に運ぼうか……」
ロンやサリーに無理はさせられない。
どうしようかと思っていたら、通いのおかみさんの声がする。今日はベラさんだ。
「おやおや、病人かい?」
「ベラさん!」
縦にも横にもたくましいベラさんなら、ルーファス様を運べそうだ。
「力を貸してください、ベラさん」
「まかせとくれ」
私が支えようとしたけど、ベラさんはヒョイッと持ち上げる。
「軽いねえ~。ちゃんと食べてるのかい、この子」
なんとルーファス様を小麦の袋のように肩に担ぎ、おまけにお子さま扱いだ。
そのままエラが用意してくれた、一階にある少し広めの客間に運んでくれた。
「ロクに食事もとらずに、無理を続けておったようだな」
カルロス様の声がしたので振り返ると、客間の入り口に杖をついて立っておられる。
この騒ぎで、いつもより早く目が覚めてしまったのだろう。
「この一年、仕事が忙しいとは聞いていたが、体調を悪くするまで働かされていたとは知らなかった」
ガウンを羽織っただけなのに、このところメキメキ回復しておられるからシャンとした威厳ある佇まいだ。
さすが前公爵様だなと感心していたら、とんでもないことを言われてしまった。
「リア、看病を頼めるか」
「は、はい。お任せください」
ずっとお世話をしていたからか、おじいさまは私のことを信頼してくださっているのだ。
ここで断わる方がおかしいだろう。私は覚悟を決めた。
「とにかくお熱を下げましょう」