初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
ベッドに降ろされたルーファス様は、苦しそうな息をしている。
エラに手伝ってもらいながら、汗を拭いたり着替えさせたりする。
最初は、ルーファス様とは白い結婚だから肌に触れるのはどうかと迷った。
でも相手は病人なんだと言いきかせて、恥ずかしいけど頑張った。
「カルロス様のおっしゃったとおり、あまり召し上がってないみたい」
ルーファス様の上半身は、かなり痩せていて細かった。
辺境伯領の騎士たちのたくましい筋肉を見てきた私やエラから見たら、華奢すぎて気の毒なくらいだ。
私が煎じた熱さましの薬を飲ませるが、意識は混濁したままだ。
ふつか経っても熱は下がらない。
頭やわきの下を冷やしても、なかなか目覚めてはくれなかった。
「コーデリア……」
うなされて私の名を呼んでいるけれど、その理由がわからない。
一年も放っておいた妻が出ていったからといって、ショックを受けるとは思えない。
なにが気になって、ここに来られたんだろう。
(離婚の書類に不備があったかしら、辺境伯家からなにか言われたのかしら)
考えてみても答えはみつからない。
とりあえず、目が覚めるまで様子をみるしかなさそうだ。