初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
「だが、寝てはいられないんだ。急いで迎えに行かないと」
早く辺境伯領に迎えに行かなければと、無理やり身体を起こすが力が入らない。
「まだ無理です!」
リアという女性が体を支えてくれるが、どうやっても起き上がれない。
「熱が高くて三日も意識がなかったんですよ。ゆっくり休まないとぶり返してしまいます」
「だが、私は」
声にも力が入らなくて、息切れがする。喋ようとしたらゼイゼイと息が洩れるような変な咳まで出てしまう。
「肺に炎症があるかもしれません。しばらくは安静にしてください」
「それでも」
リアと押し問答をしていたら、ドアが開いて祖父が怒鳴り込んできた。
「うるさい男だな!」
「おじい様……」
ベッドのそばまで来ると、祖父は私の体を布団に押し付ける。
年寄りだと思っていたが、すごい力だ。
「黙ってリアの言うことを聞け! 体を治すのが先だ!」
「ですが」
「辺境伯家には手紙を出している。返事を待て」
その言葉に反論する元気はなかった。
力なく目を閉じたら、すぐにウトウトと夢の中に引きずり込まれてしまった。