初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合


看護していて、ルーファス様はとても素直な方だと気がついた。
カルロス様のいう『繊細』という意味がよくわかる。

お屋敷にいた時、私と会うことがなかったり、ミランダ様からあれこれ意地悪されたのにもなにか事情があったのだろうか。

離婚届を置いて出てきたから、今さらそんなことを考えても遅いわね。
そう思っても、ついルーファス様のお顔を見ると考えてしまうのだ。

私たち、どうしてこうなったんだろうって。

でも、今はそんなことどうでもいい。
ルーファス様がお元気になることが一番だ。

まずベッドで起き上がること。それからお部屋を歩くこと。

そんなふうにして、ルーファス様は少しずつ行動範囲を広げていった。

カルロス様が辺境伯家に送った手紙の返事はあっさりしたもので、『コーデリアは帰っておりません』だけだった。
やっぱりと思う気持ちが半分、心配して欲しかったと思う気持ちが半分。

落ち込んだ私を見て、エラがもっと辛そうな顔をする。
だから私は気合を入れた。どうってことない!
辺境伯家に戻るつもりはないのだから、これからエラとどんな人生を歩いていくのか考えなくちゃ。

そんな様子を黙ってカルロス様が見守ってくださっていたことを、私もエラも知らなかった。













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