初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
夫婦ですけど、もう一度……
結局ルーファス様の熱が下って動けるようになるまで、ずいぶんかかってしまった。
疲労がたまりにたまっていたし、たちの悪い風邪もひいていたのだろう。
肺の炎症がもっと酷かったら、最悪命にもかかわっただろう。
これほどルーファス様を酷使してきた王宮に、なんだか腹が立ってきた。
庭の散歩ができるようになったルーファス様は、風通しのいい木陰で読書をされるようになった。
本を読みながら、私が薬草の手入れをしていたり洗濯をしている様子を眺めていらっしゃる。
ここを訪ねて来られたときの様子では、すぐにも辺境伯領に出かけるかと思っていたけど、あの素っ気ない手紙を見て諦めたようだ。
それがいい。王命で嫌々結婚した相手なんて忘れて、新しい奥様を迎えるべきだ。
「リア」
「はい、ルーファス様」
「君が育てている薬草は、どれも生き生きとしているね」
庭仕事が珍しいのか、ルーファス様は私と並ぶようにしゃがみ込み、薬草を見つめている。
「それに、君の作る薬は王都のものと少し違うようだ」
さすがルーファス様は鋭い。
私が作る薬は、すべて辺境伯家で使用している配合なのだ。
「そうでしょうか」
気がつかないふりをして、私はせっせと薬草を摘む。
「効き目がいいし、湿布はおじい様のお気に入りじゃないか」
「お気に召したなら、よかったです」
なんとか平静を保っているが、ルーファス様との距離が近くて新芽を摘む手元が狂いそうだ。