初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
部屋に残ったのは、ルーファス様とカルロス様、そして私。三人とも黙ったままだ。
開けっ放しのドアから、恐る恐るエラが顔をのぞかせている。
「おじい様、今のお言葉は」
「そのままの意味だ」
「リアが? コーデリア?」
そのままルーファス様は凍ったように動かない。
カルロス様はニヤニヤと笑っておられるだけだ。
「お前も鈍いが、リアも頑固だからなあ」
その時、エラが飛び込んできた。
「コーデリア様は頑固なんかじゃありません! そうしないと辺境伯家でもロールザイト公爵家でも生きてこられなかったんです!」
「エラ、黙って!」
私が止めてもダメだった。
目を丸くしているカルロス様とルーファス様の前で、私がマチス家でどんな扱いを受けていたのか喋ってしまった。
まさか嫁いできたマチス家の次女が、使用人に混ざって育てられた教養のない娘とまではご存じなかっただろう。
私はますます肩身が狭くて、俯いたままどうしていいのかわからなかった。
もうここを出ていくしかなさそうだ。
「うそをついて、黙っていて申し訳ございません。すぐにお屋敷から出ていきますのでお許しください」
エラもすべて喋って落ち着いたのか、頭を下げている。
「申し訳ございませんでした。ただ、ロールザイト公爵家でコーデリア様がお辛い思いをされたことだけはご理解ください!」
「エラ、もういいのよ」