初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合




***



実は、私はルーファス様と初対面ではない。
あちらは覚えていないかもしれないけど、十年前に一度だけ王宮で開かれた第二王子のアラン様のお誕生会でお会いしているのだ。

辺境伯家の次女として、私にもお茶会への招待状が届いたのだ。
王家からのものだから、執事長や侍女長は焦っただろう。私が出席しないと、王家への対応としてはマズいのだ。
父や正妻、兄姉たちは社交の時期だったから王都にある屋敷にいた。
執事長が用意してくれた紋章もないような馬車に侍女とふたりで放り込まれ、王都にむかった。
家族とはまったく別行動になるから、私が参加するなんて誰も知らなかったんじゃないかな。

王都の屋敷に着いても、私と侍女は離れに部屋をあてがわれた。
でも私の面倒をみてくれた王都の執事が優しい人でよかった。
私用のドレスも準備していてくれたから、当日は父たちとは別の馬車で王宮へ向かった。






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