初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合


「大人しくしてくださいよ」

同行してくれた侍女に念を押されたけど、まだ八歳の私にわかるはずもない。
ただただ広大な敷地や白亜の王宮に驚き、その豪華さに唖然とするばかり。

お誕生会には大勢の貴族の子どもたちが招かれていた。
着飾った令嬢や令息がいる華やかな場所に私は怖気づいてしまった。
この日は十歳になる王子の側近や婚約者候補を選ぶ会も兼ねているらしく、令嬢たちは『我こそは』と意気込んでいるし、令息たちは自分がどれだけ優秀なのかを自慢している。

田舎育ちの私は、いきなり都会の洗礼を受けた。
令嬢たちの交わしている流行のドレスやら、有名店のお菓子やらの会話にもついていけない。
王都に住む子たちは交流があるのか、すでにグループが出来あがっていて私の存在はまるっと無視された。
会話もできない地味な子なんて、仲間に入れる価値すらないとみなされたのだろう。

結局、私はすみっこにぼんやり立っているしかなかった。子どもにも壁の花って言葉が適応されるなら、その状態だ。

そこから会場を見渡していたら、大勢に囲まれている男の子が見えた。
あの方がアラン王子様なんだろうと思ったけど、私はなよっとして神経質そうな顔が好みじゃない。

私はすっかり退屈してしまった。

(どこか面白い場所はないかなあ)

おもちゃや遊具があるはずもなく、思い切り身体を動かせる場所もない。
会場から出てウロウロしているうちに、自分がどこにいるのかわからなくなってしまった。



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