初恋は実らぬものというけれど……ある辺境伯令嬢の場合
(どうしよう)
チョッと心細くなっていた私の前に、いきなり少年が現れた。
「君は迷子?」
輝くプラチナブロンドの髪。澄みきった水色の瞳は、まるで絵本にでてくる王子そのものだ。
辺境の地では絶対にお目にかかれない美しい姿に、私は見とれてしまった。
じっと見つめていたら、その少年はそっと私の手をとった。
気の利いた返事もできなくて、私はただ首を縦に振った。迷子だとわかって欲しくて。
すると王子様のような少年は私の手を引いてゆっくりと歩き出した。
やがて見事な庭園にたどり着く。そこには色とりどりのバラが咲き乱れていた。
「きれいでしょ」
「うん」
それだけしか言葉を交わさなかったけど、お互いの気持ちは伝わった気がした。
私を慰めようとしている優しさ。そのお返しに、私からは感謝の気持ち。
噴水やトピアリーも楽しみながら、手をつないで庭園を歩いた。
さっきまでの騒々しいパーティー場所ではなく、緑や花でいっぱいだから私は心が軽くなる。
金髪で水色の瞳の絵本の王子様のような少年も、私のペースに合わせてくれる。
夢のようなひとときだった。