夢より素敵な時間を、初恋のきみと。

呆然と立ち尽くしていると、如月さんの友達がわたしの存在に気づいてしまった。

「盗み聞きとかありえないんですけど~」

その言葉で如月さんもこちらへ視線を向けて、一瞬バツが悪そうな表情を浮かべた。

けれど、すぐに

「地味子は地味子らしく掃除してなよ~。わたしはこれからレッスンがあるから忙しいの」

そう言ってスクバを肩にかけて立ちあがり、わざとぶつかるようにわたしの間横を通り過ぎた。

その時、ぶつかった拍子に手に持っていたスマホが地面に落ちてしまった。

慌ててすぐに拾ったけど、

「皇月先輩と凛ちゃん?」

運悪く如月さんが待ち受け画面を見てしまったらしい。

やばい、わたしがふたりに憧れてるなんてバレたら……

「へぇ、月島さんもふたりのファンなんだ?」

バカにされる覚悟でスマホを手に握りしめてうつむいていたら、予想外に優しい口調で如月さんに言われて、思わず顔を上げた瞬間。
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