夢より素敵な時間を、初恋のきみと。
ちょっと待って。これはなに? 夢?
憧れの皇月先輩に声をかけられたうえに、部屋にふたりきりなんて。
信じられない出来事に、さっきまで溢れていた涙も止まった。
「あの女子たちに何か言われてただろ?」
「え?」
「偶然通りかかったら、なんかやばそうな感じだったから。廊下から少し様子見てたんだ」
やだ、皇月先輩にいじめられてるところ見られてたんだ。
「地味子のくせに少女趣味なんてキモイって。でも、その通りですよね。わたしなんかが可愛くなりたいなんて夢見ちゃいけないんですよね……」
言いながら、また涙が溢れてきた。
よりにもよって憧れの皇月先輩にいじめられてるところを見られるなんて、恥ずかしくて、情けなくて。
「わたしなんかって言うなよ」
ぽつりとつぶやくように言われた言葉に顔を上げると、目の前に皇月先輩がいた。