夢より素敵な時間を、初恋のきみと。

「……わたしは応募してないから」

消え入りそうな声でかろうじてつぶやくと、

「だよねぇ? だいたいドレスコードで着ていく服なんてないだろうし」

如月さんが明らかにバカにしたような言い方でそう言うと、周りからクスクスと嘲笑が聞こえてきた。

やっぱりわたしが参加するなんてバレたら大変なことになりそう…。

でも、“音夢”になればわたしだってあんな風に変われるんだ。

せっかく皇月先輩がくれたチャンスを無駄にしたくない。

そして、如月さん達を見返したい。

もう一度あの夢のような時間を過ごしたい。

そう思ったわたしは、お茶会に参加することを決めた。


☆ ☆ ☆


6月15日、お茶会当日。

梅雨の合間の晴天は、まるでわたしに『頑張れ』と言ってくれているみたい。

時刻は午後1時。目の前には乙女の森社の事務所がある大きなビル。

いざ、夢の世界へ!

気合を入れて一歩足を踏み出すと、自動ドアが開く。
< 34 / 156 >

この作品をシェア

pagetop