夢より素敵な時間を、初恋のきみと。

わたしをいじめてた如月さん達を見返すために協力してくれているんだよね。

わたしが『音夢』だから、こうして笑顔を見せてくれているんだよね。

そう思ったら、なんだか急に胸が苦しくなった。

「音夢ちゃん、ちょっといいかな?」

その時、凛ちゃんに声をかけられて一緒にメイクルームの方へ向かった。

「凛、音夢のこといじめるなよ」

からかうように言った皇月先輩に、

「そんなことしないもん!」

と否定した凛ちゃん。

凛ちゃんは気さくで優しい子だし、今さらわたしをいじめるようなことはしないだろうと思うけど、真剣な表情に少し不安になる。

「単刀直入に聞くね。音夢ちゃんって、七星くんのこと好き?」

人通りの少ない廊下の端で、凛ちゃんが声をひそめて尋ねた。

「……え?」

予想していなかった質問になんて答えればいいか戸惑っていると、

「わたし、七星くんのこと好きなんだ」

真っすぐわたしを見て、凛ちゃんが言った。
< 67 / 156 >

この作品をシェア

pagetop