夢より素敵な時間を、初恋のきみと。

「よし、完璧! さぁ、いよいよ本番よ。頑張ってね」

ふたりに見送られて控室を出て舞台袖へと向かうと、

「皆さんお待たせしました! いよいよサプライズ候補の登場です」

雨沢先輩の言葉が聞こえて、拍手と歓声が響いた。

ついに本番なんだ。

どうしよう。緊張し過ぎて手足が震えてきた。

やっぱりわたし……

「また “わたしなんか” って思ってる?」

後ろから突然そんな言葉が聞こえて、振り返る。

「……皇月先輩」

「月島なら大丈夫だよ。胸張ってステージ立ってあいつら見返して来い!」

「……っ」

先輩に背中を押されて、嬉しくて思わず泣きそうになる。

そうだよ。今まで音夢として頑張ってきたわたしなら、大丈夫。

皇月先輩も天野先輩も、美雲さんも、雪村さんもいる。

わたしはひとりじゃない。

目を閉じて深呼吸して、ステージへ一歩ずつ踏み出す。

一瞬、雨沢先輩と目が合うと、「頑張れ」と言う様に笑顔で頷いてくれた。
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